日経ITPRO by 日経コンピュータで、 「アジャイル検定始動」についての 取材記事が掲載されました。

更新日:2015/10/02

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アジャイル技術者を1万人に、「アジャイル検定」が始動

井上 英明=日経コンピュータ 

2015/10/02

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アジャイル開発の基礎的な知識を問う「アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験(アジャイル検定)」が2015年9月に始まった(画面1)。日立製作所や東京海上日動システムズなど9社が集う試験母体である「アジャイルソフトウェア開発技術者検定試験コンソーシアム」は早期に1万人まで合格者を増やしたい考えだ。

画面1●検定の紹介ページ(出所:アジャイルソフトウエア開発技術者検定試験コンソーシアムのWebサイト)

ユーザー側として参加した東京海上日動システムズのシステム開発本部長を務める大内美樹エグゼクティブオフィサーは「まずはしっかりとしたアジャイル開発を広めたいという気持ちがあり、そのためにはアジャイル開発の基本がわかる技術者を増やす必要があった」とアジャイル検定の意義を話す。

専門書2~3冊を読み込んだ知識レベルで合格

アジャイル検定はアジャイル開発のスキルを客観的な尺度で分析・判定する。基本的な知識を問うレベル1と、アジャイル開発の具体的な開発手法を問うレベル2の2階建ての試験となる。現時点ではレベル1を提供し、レベル2は詳細を今後公表するとしている。

レベル1では4分野を出題する(画面2、画面3)。「アジャイルに関する基礎知識」では、「アジャイル宣言」などに関する概念や知識を問う。アジャイル宣言とはアジャイル開発の各手法の提唱者が合意したもので、例えば、「(ウォーターフォール型開発で重視する)包括的なドキュメントよりも、動くソフトウエアを価値とする」など、アジャイルの根幹ともいうべき精神を表している。

画面2●アジャイルソフトウエア開発技術者検定試験で問う内容(出所:アジャイルソフトウエア開発技術者検定試験コンソーシアムのWebサイト)
画面3●具体的な出題テーマ(出所:アジャイルソフトウエア開発技術者検定試験コンソーシアムのWebサイト)

 加えて、コミュニケーションや振り返りといった「開発チームの運営」、反復やチーム編成といった「プロジェクト管理」、ペアプログラミングやリファクタリングといった「技術」を問うとしている。コンソーシアムを引っ張るテクノロジックアートの長瀬嘉秀代表取締役は「これから実践しようとする技術者が専門書を2、3冊読み込んでくれれば合格できるように問題を作っている」と話す。

東京海上日動システムズの大内氏は「技法的にはスクラムがメーンでエクストリームプログラミング(XP)が一部となっている。現場で採用する技法に即しているし、4分野が偏りなく出題されている印象」と話す。大内氏はまず読む一冊に『アジャイルサムライ−達人開発者への道』(オーム社)を挙げている。

試験時間は60分。4択の問題を60問出題し、8割以上の正解で合格という。7割程度の合格率を見込む。受験するにはまず企業がコンソーシアムに参加する必要がある。入会金や年会費などは無料だ。

複数社が混在する開発プロジェクトで受験を望むような場合は、開発プロジェクトの運営会社がコンソーシアムに参加すれば全員受験できるという。受験料は1万800円(税込み)だが、年末までに入会すると2016年3月までの試験料を2割割り引くという。受験できるのは現状では新宿と池袋の2カ所で今後増やす意向。企業ごとの出張受験も可能という。

コンソーシアムの参加企業は9社。関電システムソリューションズと戦略スタッフ・サービス、テクノロジックアート、電算システム、東京海上日動システムズ、トランスコスモス、日立製作所、パソナテックシステムズである。一方、試験問題を作成したのは8社から成る「準備委員会」。コンソーシアムに参加する3社(戦略スタッフ・サービスとテクノロジックアート、日立製作所)のほか、NTTデータやオージス総研、トランスコスモス・テクノロジーズ、日本IBMが加盟している。

知っているが実践はこれから

アジャイル開発が日本で紹介されて10年以上たつ。なぜ今、日本独自の試験を開催する必要があるのか。テクノロジックアートの長瀬氏は「言葉は普及したが実践はまだこれからと認識している。実践するにはまず技術者が必要だ。大手で技術者を集める際には何らかの基準を求められるため、検定を作った」と話す。

富士通グループと協力して東京海上日動あんしん生命の代理店向けシステムを開発した経験を踏まえ、大内氏は「要件が最初から決まっていないシステム開発ばかりの今、試しながら開発するアジャイルは発注者の自然な気持ちに寄り添う」としている。同社は2年目の社員に受験させ、毎年20人強の合格者を見込んでいる。

コンソーシアムは「早期に1万人の合格者を」と目標を掲げる。まずはコンソーシアムの参加企業を大手を中心に300社に増やしたい考えだ。個人受験の申し込みは再来年にも始めたい意向のようだ。

実際の大手ベンダーのアジャイルへの取り組みはどうなのだろうか。日本IBMとNECは広く海外でも浸透している「スクラムマスター」の資格取得者を中心にして開発を進めているという。現状で日本IBMは100人規模、NECは数十人規模を抱えている。

NTTデータは専門部署に100人以上を配置、新人教育にアジャイル教育を必須とする計画もあり、専門技術者を250人まで増やすことを目指す。日立製作所は「アジャイル開発の技術者の定義が難しい」とした上で、日立製作所は世界で数千人規模がいると話す。

富士通は国内グループ3万人の技術者について、2019年までにリーダー級のアジャイル技術者を現状の600人から2000人に増やし、メンバー級は現状の300人から1万8000人に急ピッチで増やす計画だ。需要の拡大に応えるのが目的。今回のアジャイル検定の合格者目標などは検討中という。